​Research

1:神経再生と中枢神経機能回復に向けて​

 神経系高次構造は絶妙にかつ美しく形成されています。どうやって複雑な神経回路ができるのだろうか? この疑問から研究を続けてきました。細胞接着のメカニズムと接着分子の解析から、神経以外の組織構築の成り立ちを見てきたのですが、もっとも複雑な神経系の構築と、そこに成り立つ高次神経機能の一端を捉えたいと考えています。 形と構造を見て機能を考える、細胞生物に立脚した解析を心がけています。 

 1-1) : 細胞外環境整備による神経機能回復

 これまでの神経発生と神経系の細胞生物学的解析から、接着分子の相手にもなる糖鎖も標的として、糖鎖合成酵素のノックアウトマウスを用いた神経発生と神経再生のプロジェクトを開始。

 中枢神経系・脊髄損傷における再生時の糖鎖コンドロイチン硫酸の機能と、その発現制御が中枢神経再生や脊髄損傷後の劇的回復に繋がることを見出しました(Nature Comm. 2013)。また同時に、そのコンドロイチン硫酸の糖鎖構造を認識し神経細胞接着分子が、神経細胞移動や細胞極性決定に重要であることの成果が示されています。(Nature Neurosci.2013, Neuron 2014)

 この成果に基づき、本研究室では現在、このコンドロイチン硫酸をはじめとする糖鎖関連ノックアウトマウスおよび神経接着分子ノックアウトマウスの交配実験やゲノム編集技術を用い、さらに神経発生における詳細なメカニズムを診るための解析を進めつつあります。また、治療応用の観点から、糖鎖発現と糖鎖修飾に関わる様々なドラッグスクリーニングとその基礎研究、さらにはバイオマテリアルを用いた治療への応用展開などの研究を進めています。(AMED創薬支援事業、AMED CiCLE事業など)

CS脊損図 1.tif

 1-2) : 神経シナプスの人為的接続による機能回復

​ 中枢神経系・脊髄損傷における再生の場の制御という観点での、上記のコンドロイチン硫酸糖鎖の機能から、さらに神経回路の基本構造であるシナプスを結合させる人工キメラタンパク質CPTXを応用し、中枢神経・脊髄損傷後の機能回復に高い効果を示すことを見出しました(Science. 2020)<慶應大・医・柚﨑教授、ドイツ神経変性疾患センター、イギリスオックスフォード大学およびMRC分子生物学研究所との国際共同研究>。

 この成果に基づき、本研究室では現在、このCPTXの応用展開とさまざまな神経機能回復に向けての研究を進めています。

​ (科学研究費基盤研究、新学術領域研究など)

CPTX機能 1.tif

<武内教授メインプロジェクト>

<武内教授笹倉助教メインプロジェクト>

2:さらに分子細胞生物学を駆使した解析

 細胞不死化技術や遺伝子導入技術を駆使して、上記の遺伝子制御や生体内でのタンパク質導入系を進めています。

 とくに、ヒト初代培養細胞へTART遺伝子を導入し(テロメアの維持に機能することで)、構築した寿命延長細胞を用いた脳腫瘍術後への応用技術や脊髄損傷治療に向けた遺伝子導入細胞としての利用などを探索しています。

 このための染色体・遺伝子改変技術や技術開発、導入技術、などの応用開発も展開しています。

​ (科学研究費基盤研究など、さらに多くの企業との共同研究)

 

<池野准教授メインプロジェクト>

3:細胞外マトリックスの制御による さまざまな臓器・器官での疾病への応用

 我々が有する多種類の遺伝子改変動物を用いて、コンドロイチン硫酸の機能や生体での制御法について研究を進めています。 特に皮膚の形成や顔面の骨形成にコンドロイチン硫酸が重要なこと(Scientific Res. 2018)、さらには記憶学習にかかわる神経幹細胞の増殖に重要であること(J.Neurosci. 2018)などを見出だしています。

 

​ いかに生体内のこれら細胞外マトリックス環境を整えるか、どのように医療に結び付けるかを、長寿命に関わりこれら分子を制御する補酵素(J.Cell Sci.2015  笹倉ら)や、コンドロイチン硫酸量を制御できる生体成分や機能分子を用いて利用することも研究しています。

​ 神経系の解析では再生治療応用だけではなく、痛みへの対応や運動機能回復をいかに正しくとらえるかを解析するために、新しい機能解析手法やAIによる解析系も導入しつつあります(AMED受託研究、および 科学研究費・新学術領域研究など)。

 

CS皮膚 1.tif

4:AIや先端技術を用いての神経損傷後回復の解析

 神経損傷を中心として様々疾患などに対する生理機能回復などをAIを利用した解析、さらには先端計測を用いて研究すること、さらには痛みなどの検出を精度よくとらえる技術開発を進めています。​今後の研究展開に必須の技術として積極的な展開を進めつつあります。

​(科学研究費・新学術領域研究、および民間共同研究など)